グローバルなユーザーに向けてウェブサイトを設計する際、「どの国でも通じるデザイン」を目指しても、文化によってユーザー行動は大きく異なります。
特に日本と欧米のユーザーを比べると、視覚的な優先順位(ビジュアルヒエラルキー)、レイアウトの構造、余白の使い方に明確な違いがあります。
この記事では、日欧のデザインの違いを掘り下げながら、両方の文化に対応したデザインのコツをご紹介します。
⚠️ 免責事項:
この記事では、日本と欧米のユーザー行動やデザインの傾向について一般的な違いをご紹介していますが、すべてのプロジェクトに当てはまるわけではありません。最適なデザインは、ビジネスや個人の目的、状況、ニーズに応じて異なります。ここで紹介する内容は、あくまで参考としてご活用ください。

🧭 1. ビジュアルヒエラルキー:目を引くポイントが違う
ユーザーが最初に目にするもの、ページの流れ、どこに注目するかを決めるのがビジュアルヒエラルキー(視覚的な優先順位)です。文化によって視覚的な反応が異なるため、それを理解することが効果的なデザインには欠かせません。
欧米ユーザーの場合:
見出しや画像、CTA(行動喚起)など、視覚的に目立つ要素が強調されるシンプルな構成が一般的です。ページを「F型」または「Z型」に素早くスキャンするユーザーが多く、明確な視覚的ガイドが求められます。
日本のユーザーの場合:
より情報量の多いレイアウトに慣れており、テキストと画像が同じくらい重視されます。一つの要素に注目するというよりも、複数の情報を同時に見ながら判断する傾向があります。
英語のサイトを作るときのヒント
情報は「絞って」「整理して」伝える:
英語圏のユーザーは、シンプルで直感的な構成を好む傾向があります。見出しや段落を使って要点をまとめ、ぱっと見て内容が伝わるように心がけましょう。
🧩 2. レイアウト:構造と流れの違い
ページ構成は、ユーザーが情報をどれだけ簡単に見つけられるか、どのような体験をするかに直結します。情報の順序や密度、配置に対する期待値は文化によって大きく異なります。
欧米のサイトの場合:
「ヒーロー画像 → サービス紹介 → お客様の声 → CTA」など、整然とした構成が多く、余白を活かしてユーザーの集中を促します。
日本のサイトの場合:
日本のウェブサイトは、一般的に「スクロールしながら情報をじっくり読む」ことを前提に設計されていることが多く、ページ内に多くの情報を詰め込む傾向があります。これは、ユーザーが「まず全体を見てから、自分に必要な情報を選びたい」と考える傾向があるためです。
アドバイス:
どちらの文化にも対応するには、タブやアコーディオンなどを活用して、必要に応じて情報を表示・非表示できる構造が効果的です。
⎚ 3. 余白の使い方:快適さ vs 情報不足
余白は単なる見た目の美しさではなく、読みやすさや集中力、信頼感に影響します。ただし、「空白」の意味合いは文化によって異なり、ある文化では「洗練」とされても、別の文化では「情報不足」と感じられることもあります。
欧米ユーザーにとっての余白:
余白は視覚的な快適さや洗練さ、使いやすさに直結します。必要な要素だけが際立ち、迷いを生みにくくします。
日本のユーザーにとっての余白:
余白が多すぎると「情報が足りない」「何か忘れているのでは?」という不安を感じることもあります。特に企業サイトやネットショップでは、情報が詰まっている方が信頼感につながることも。
英語のサイトを作るときのヒント
適度な余白を取り入れる:
余白は「洗練された印象」や「読みやすさ」を生みます。要素を詰め込みすぎず、ゆったりとした配置を心がけましょう。
📝 4. タイポグラフィと読みやすさ
タイポグラフィ(文字の見せ方)は、読みやすさだけでなく、サイト全体の印象に大きく影響します。日本語と英語では文字の構造が大きく異なるため、フォントの選び方や行間の調整には細やかな配慮が必要です。
欧米ユーザーの場合:
タイポグラフィは視覚デザインの一部として扱われます。モダンで読みやすいサンセリフ体(例:Helvetica、Open Sans)が好まれ、行間や文字の太さ、コントラストもスキャンしやすさを意識して設計されます。
日本のユーザーの場合:
日本語特有の漢字・ひらがな・カタカナの混在や縦書きへの対応など、タイポグラフィの設計がより複雑です。長めの文章や小さめの文字でも問題なく読めるケースが多く、フォントとしてはNoto Sans JPや游ゴシックなどがよく使われます。
アドバイス:
言語ごとに適したフォントと文字サイズ、行間を設定しましょう。日本語は文字が複雑なので、小さくしすぎると可読性が大きく下がります。必ず各言語で表示テストを行いましょう。
🔒 5. 信頼性を伝えるビジュアルの違い
ユーザーは数秒のうちに「このサイトは信頼できるか」を判断します。ただし、信頼を感じさせる要素は文化によって異なり、ある国では安心感を与える要素が、別の国では逆効果になることもあります。
欧米のサイトの場合:
洗練されたミニマルデザインや証言(Testimonials)、SSL認証、ブランドの一貫性などが信頼性の鍵となります。ポップアップや点滅バナーは、逆にスパム的に見られることがあります。
日本のサイトの場合:
ユーザーが安心するのは、より視覚的で直接的な「信頼の証」。認証マーク、受賞ロゴ、お問い合わせ先、カスタマーサポートの番号などが明確に表示されていると安心感があります。情報量が多くても、必要な「信頼マーク」があれば信頼度が上がる傾向があります。
アドバイス
トラスト要素(信頼感)を明確に見せる:
レビュー、受賞歴、企業ロゴなど、信頼を高める要素は目立つ場所に配置を。第一印象で安心感を与えることが大切です。
おわりに
ユーザーの文化的背景を理解することは、単なるデザイン戦略ではなく、「信頼」を生む第一歩です。
日欧で異なるレイアウトや情報の見せ方に配慮することで、どちらの文化のユーザーにも自然で使いやすい体験を提供できます。バイリンガルサイトや海外展開を目指す方は、ぜひ文化に寄り添ったデザインを意識してみてください。